第1回F1合同テストinバルセロナ
2018年2月26日からスペインバルセロアにあるカタロニア・サーキットで第1回合同テストが行われており、今シーズンのテスト初日である1日目が無事終了しました。この記事ではテスト1日目の結果を見て感じたことを記していきたいと思います。
トップタイムはレッドブル メルセデスとフェラーリが続く
トップタイムはレッドブルのダニエル・リカルドが1分20秒179、2番手にはメルセデスのバルテリ・ボッタスで1分20秒349、3番手にフェラーリのキミ・ライコネンが1分20秒506と続いています。
また、レッドブルはテスト初日に105周を走り切り、全体を通して最も多くの周回数をこなしたチームとなりました。これは昨シーズンルノーPUの信頼性に悩まされたレッドブルにとっては現時点では朗報といえる結果でしょう。
That’s all folks! (for today at least) Here’s where we’re at after day 1 of #F1Testing!
Feels good to be back on track.https://t.co/TeCixOdvcn pic.twitter.com/4MHoXwdYit— Pirelli Motorsport (@pirellisport) 2018年2月26日
トロロッソ・ホンダVSマクラーレン・ルノー
さて、昨シーズン、ホンダパワーユニットとルノーパワーユニットを実質的に交換した形となったマクラーレンとトロロッソ。この両チームが今シーズンどういった結果になるのかというのが僕は非常に楽しみでなりません。
実際には元チャンピオンチームでありF1界でも有数の大規模で先進的な施設を持つマクラーレンと、実質的なレッドブルの姉妹チームで新人育成に徹している小規模チームのトロロッソとでは比べる土俵が違うとは思うのですが、マクラーレンはホンダとひと悶着あり、トロロッソはルノーとひと悶着ありで実質的に互いにパワーユニットをトレードした形になった両チームですから、マクラーレンとホンダの言い分、トロロッソとルノーの言い分は果たしてどちらが正しかったのか、というのがどうしても気になってしまいますね。
もちろん2018年はシャシーもパワーユニットも互いに開発が進み昨年のものとは別物なので完全な比較というのはできないのですが、昨年マクラーレンが主張していたパワーユニットのパフォーマンス、信頼性の低さ、それどころかマクラーレンホンダで発生したトラブルはすべてホンダが引き起こしていると言わんばかりのホンダバッシングは果たして事実だったのか。
一方、昨年前半はトラブルも少なくワークスルノーを上回る活躍をしていたトロロッソが、チャンピオンシップ後半に差し掛かるとルノーパワーユニットの故障が頻発し、ルノーからはトロロッソのパワーユニットの扱い方、シャシーが悪いと言われ、最終的にはチャンピオンシップポイントでルノーに逆転を許してしまったトロロッソ。トロロッソのトスト代表は、ルノーは中古部品で組み上げたパワーユニットをトロロッソに差し出していたといいます。
互いにシャシーが悪いのか、パワーユニットが悪いのかという点で揉めているのは同じで、今年はいったいどうなるのかという判断の目安がこのプレシーズンテストの結果からぼんやりとわかってくるかと思います。
トロロッソ・ホンダ
今季からホンダパワーユニットに載せ替えたトロロッソは、恐らく周囲(特にマクラーレン)が想像していたのとは全く逆の展開で、すこぶる順調なスタートとなりました。午前のセッションだけで72周もの周回を重ね、午後は悪天候となり走行時間がだいぶ削られる形となりましたが、合計で93周もの周回をトラブルフリーで重ねることができました。
また、ホンダパワーユニットの課題であったパワー面にも嬉しい兆候が見えます。テスト初日のスピードトラップではフェラーリのキミ・ライコネンの287.7kmが1位で、なんと2位にトロロッソのブレンドン・ハートレーが284.9kmを記録。
まだテスト初日で様々なシステムチェックを行っている段階で、パフォーマンスランを行っているチームは少ないので喜ぶのにはまだ早いのですが、それでもホンダパワーユニットの課題だと言われていた信頼性とパワーが少なくとも改善している、伸びしろがありそうだとわかっただけでもうれしいですね。
実際にトロロッソのフランツ・トスト代表もテスト初日を振り返り、
「何の問題も見当たらない。パワーユニットは非常によく機能している」
「非常にポジティブなことだ。ホンダはこの数カ月において、信頼性においても、パフォーマンスにおいても、大きな進歩を果たした」
と述べており、ホンダへの強い信頼と期待を示しています。
また1日目のテストを担当したブレンドン・ハートレーは、
「エンジンのドライバビリティは僕がF1マシンで経験したなかでベストのレベルだった。つまり、あらゆる面においてすごくポジティブだったってことだ。僕には何ひとつ不満はないよ」
「完璧なスタートを切ることができた。ここからさらに向上していきたい」
と述べており、非常に順調な初日であったと喜び、エンジンのドライバビリティは自分が経験したなかで最高レベルだったと語っています。ハートレーは昨シーズン、ルノーパワーユニットを搭載したトロロッソで走行しているので、つまるところ昨シーズンのルノーパワーユニットよりは上だというのは間違いないのでしょう。
つまり、ホンダパワーユニットはマクラーレンで酷評されていたよりも悪いものではない、若しくは劇的な改善があったのではないかと思ってもいいのではないでしょうか。
少なくとも、トロロッソとホンダは互いを十分リスペクトしており、両社の関係も極めて良好に見え、お互いに活き活きとしている様子が伺えます。
And for those asking what’s for lunch… why not have both sushi AND pasta? 😉 pic.twitter.com/eUp4rD3tTU
— Toro Rosso (@ToroRosso) 2018年2月26日
余談ですがランチタイムはパスタとお寿司だったようです。おいしそうですね。
今季のトロロッソ・ホンダには十分期待できそうですし、台風の目となって上位陣を脅かす存在になってほしいですね。
マクラーレン・ルノー
皮肉にもトロロッソとは真逆のスタート、つまるところ全く順調ではないスタートとなってしまったのがマクラーレン。テストが始まった直後、わずか6周を走ったところでなんと右リアホイールからタイヤが外れ、スピンを喫しコースアウト。タイヤが外れた原因の究明とマシンの修復のためランチタイム直前まで走行ができず、午後は悪天候となりましたが、午前中に走れなかった分データ収集のために走行を行い合計51周を走りきりました。
The wheels quite literally came off for Fernando Alonso earlier 👀
Just a handful of laps in – not an ideal start to #F1Testing for McLaren 😬#F1 pic.twitter.com/atANeIlr7L
— Formula 1 (@F1) 2018年2月26日
タイヤが外れた原因はホイールナットに原因があったとのことですが、もしナットそのものがダメなのであれば原因究明に時間がかかりそうですし、マクラーレンのようなトップチームにはあっては欲しくないことですが、個人的にはホイールナットの閉め忘れなのでは?と感じてしまいました。
また、マクラーレンは今回のタイヤ脱落について、
「こういったことのためにテストがある。どのチームもテスト期間中はいろいろな問題に見舞われるはずだ。そのためのテストなのだ」
「失う走行時間はほんのわずかなものだ。大問題ではない」
と述べており、大した問題ではないと説明しました。が、これは僕は十分に大した問題だと思うのです。動画を見るとわかると思うのですが、脱落して外れたタイヤがコースの外まで勢いよく転がっていってしまっています。これは大変危険なことで、過去にもこういった車から脱落したタイヤがドライバーやマーシャルに衝突したことによるケガや死亡事故が起きています。
また今季から導入されたHALOもこういった事故から防ぐために導入されたもので、今回マクラーレンが起こしたあまりにも初歩的なしかしながら致命的なタイヤの脱落というミスはHALOのようなコックピット保護対策が必要だろうと改めて考えなくてはいけなくなってしまうような事故だと感じました。
今回は幸い脱落したタイヤによるけが人が出なくてよかったですが、これがレース中だったとしたら結果は違っていたかもしれません。
そもそも、マクラーレンとフェルナンド・アロンソは昨シーズンのテスト初日にホンダパワーユニットのオイルタンクの設計ミスで満足に走行ができなかったときに、「アマチュア的なミスで起こってはならないこと」だと言いホンダに対して激怒をしていました。
なぜホンダに対しては今回マクラーレンが起こしたミスと同じように「こういったことのためにテストがある。どのチームもテスト期間中はいろいろな問題に見舞われるはずだ。そのためのテストなのだ」という言葉をかけてあげられなかったのでしょうか。チームとして共に頂点を目指す身としてなぜリスペクトを行わないのでしょうか。ともに勝ちをみて笑うなら、ともに負けて涙を流すことも必要なのではないでしょうか。
マクラーレン・メルセデス時代にマクラーレンがシャシー開発で失敗したときにエンジンサプライヤーのメルセデスはマクラーレンのことをボロクソに言っていたでしょうか。僕の記憶ではそんなことはあまりなかったと思います。
なぜ自分たちが原因のミスに対してはこんなに甘い対応なのか甚だ疑問です。ましてや、もしホイールナットの強度不足や構造的な欠陥ではなく締め忘れなのだとすれば、それはもう昨年のピットストップの遅さでもずっと指摘されている通り、マクラーレンがチャンピオンチームだったというのは今はもう遠い昔の話で、現状のチーム力はトップチームに及ばずもはや2流、3流のチームにマクラーレン自身が気付かないうちに落ちてしまっているのではないでしょうか。
マクラーレン・ホンダ時代のホンダパワーユニットに信頼性とパワー不足という問題があったのは確かに否定できません。それはホンダ自身も認めていますし、グリッド上で最下位のパワーユニットだったことは事実でしょう。マクラーレンは常に自分たちのシャシーはトップレベルにあるがホンダのパワーユニットが酷すぎると、常にホンダのネガティブキャンペーンを行っていました。
ですが、こうしてホンダと別れた後もテスト初日からトラブル(しかも初歩的)が発生しているところを見ると、どうしてもホンダだけに問題があったようには思えないのです。
どうしてもマクラーレンに対しては少々辛口になってしまうのですが、僕もマクラーレンは好きなチームでしたので頑張ってほしいのです。しかし昨今のマクラーレンはあまりにも責任転換が酷すぎてレーシングスピリッツがあるのかどうかどうも怪しいなと僕は感じています・・。
長くなりましたが、今シーズンのF1はメルセデスとフェラーリはもちろんですし、そこにレッドブルが絡んでいけるのか、昨シーズン以上に混戦しそうな中段争いと見どころのありそうなシーズンになりそうで楽しみです。
トロロッソ・ホンダにはぜひとも頑張ってほしい。願わくばマクラーレンに一泡吹かせてやってほしいなと思っています。